人間の冬眠(とうみん)
クマ志郎先生の休眠教室 #05
みなさん、こんにちは。私は動物の「休眠」の研究をしているよ。冬のあいだずっと休眠することを冬眠とよぶのはしってるかな?人間は冬眠しない動物だけど、僕は人間を冬眠させたいと思って研究している。
人間は赤ちゃんを母乳で育てる哺乳類の仲間で、体の温度を36℃程度に保つことが特徴だ。まわりが36℃よりも低い場所では、エネルギーを使って体を温めるし、まわりが暑い場所ではエネルギーを使って汗をかいて体温を下げようとする。体温を一定に保つためにはエネルギーが必要なんだ。
動物は、食べ物を食べることでエネルギーを得ている。食べ物がなかったらエネルギーは作れない、だから熱も作れないのだ。ところが、いちばん熱を作らないといけない冬場は、多くの動物にとっては食べ物がもっとも少なくなる季節でもある。そこで、一部の哺乳類はエネルギーを使って暖かくなることをあきらめて、食べないという道を選んだんだ。食べないということは、熱を作れないから、体がとても冷えてしまう。だから代わりに寒さに強くなることで生き残るという作戦をとった。これが冬眠だ。
冬眠動物は体温が10℃以下になっても平気だ。ホッキョクジリスというリスの仲間は、冬眠中にマイナス4℃まで体温が落ちたという報告もあるんだ。すごいね!さて、人間は冬眠できない動物だと考えられている。そもそも、人間の体温は30℃を下回ると心臓がうまく動かなくなり、20℃台になると死んでしまうこともあるんだ。
ところが、2004年に冬眠をするキツネザルの仲間がアフリカのマダガスカル島で見つかった。人間とおなじ霊長類だが、彼らは冬眠中は体温が20℃台前半まで下がるけど、もちろん死んでしまったりしない。キツネザルが冬眠するのなら、同じサルの仲間である人間も冬眠できるかもしれないよね?さらに、2020年には、冬眠をしないネズミを冬眠に近い状態にする方法が発見されたんだ(発見したのは、私たちの研究グループだよ!)。この方法を使えば、将来は本当に人間を冬眠させられるかもしれないよ!
人間が冬眠できると、病気になってもまずは冬眠させて、ゆっくりと病院に運べるようになるかもしれない。現在の医学では治せない重い病気になっても、治療法が見つかるまで冬眠できるようになるかもしれない。それから、何十年もかかる遠い星まで宇宙旅行するときに、目的地に着くまでずっと冬眠して行けるようになるかもしれない。そして、なにかの理由で地球上から食べ物がなくなってしまっても、冬眠すれば食べ物ができるまで安全に待てるかもしれない。少し嫌なことがあれば、1週間くらい冬眠すればすっきりするかもしれない。ぐっすり眠ったあとの朝ごはんっておいしいだろう?きっと冬眠から目がさめたあとの朝ごはんはもっと美味しいに違いない!たのしみだね。