休眠論文がでました。

自分にとって冬眠関連の論文として1報目となる論文が発表されました。
Sunagawa, G.A., Takahashi M, 2016.
Hypometabolism during Daily Torpor in Mice is Dominated by Reduction in the Sensitivity of the Thermoregulatory System.
Sci. Rep., 2016, doi: 10.1038/srep37011
論文のリンク
理研のプレスリリース

今回の論文の生物学的な発見やそのために行った開発については日本語プレスリリースや論文を見ていただくといいかと思います。ここでは、そこに書ききれなかった、僕自身がどんな思いで研究をすすめたか2点ほど書き留めておこうと思います。

オスの休眠パターンがおもしろい

今までの多くの休眠論文はマウスのメスを実験対象としてきました。メスのほうが安定した低代謝を示すからです。一方で睡眠研究を行っていた自分はメスには性周期があり、3〜4日に1回の頻度で過活動(睡眠時間が減る)が生じることを知っていたたので、個体間のバラツキを減らしたいと考えて、迷わずにオスを用いました。その結果、1個体内では時間的にとても短い期間しか休眠は検出できなかったのですが、個体間のバラツキはメスよりも減ったのではないかと思います(→メスは現在測定中)。いずれ場所を変えて性差についての議論もしたいのですが、それよりも僕の興味をひきつけたのは、オスの体温パターンの変動です。図の最上段は近交系Aのメスの休眠パターンです。絶食の後半にずどんと体温が20度台に落ちている部分が休眠です。一方で同じ近交系Aのオスの休眠は様相が全く違います(2段目)。波打ちながら体温が落ちています。発振しているように見えます。さらに、他の近交系BやCでもオスは同様のパターンが見られます。なんとかして、この振動の意味を突き止められないか、と思っております。これは興味だけではなく、この振動の応じて生体内の代謝制御機構の「何か」が振動している可能性があり、能動的低代謝の制御のために有用な情報だと思われるからです。どんな数理モデルを用いればよいのか、アドバイス募集中です。

解析をベイス統計モデルで行った

2015年4月に高橋研に入ラボしてから本格的にベイス統計モデルの勉強をはじめました。時系列では、いまリバイス中の別の論文で視覚機能の評価のために階層モデルを用いて、stanを使ったMCMCサンプリングでパラメータ推定を行ったのが最初なんですが、この休眠論文はそれに続いてベイズ統計モデルを用いた論文です。具体的にはFig 3で用いている休眠の判定で、代謝のベースラインの推定に2次トレンドモデル(2階差分のトレンド項を有する状態空間モデル)を用いています。また、哺乳類の体温制御モデルのパラメーター推定に、こちらは単回帰問題ではありますが、stanを用いたMCMCサンプリングを用いています。このモデリングおよび解析を行うために、そして英語の表記法なども含めて次の書籍を大いに参考にしました。わかりやすくユーモアに富んだ作品で、最後まで飽きずに読み通せました。本当に感謝です。また、McElreath氏の講義の動画もあります:  http://xcelab.net/rm/statistical-rethinking/

genshiro

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