冬眠(とうみん)で病気と戦う
クマ志郎先生の休眠教室 #06
みなさん、こんにちは。私は動物の「休眠(きゅうみん)」の研究をしているよ。動物がほとんどエネルギーをつかわない状態を休眠っていうんだ。何ヶ月も続く休眠を「冬眠」とよぶ。冬眠は食べ物がない厳しい環境を生き残るために自然界の動物が生み出したサバイバル法ともいえる。私は、自然界の動物だけではなくて、人間にも冬眠は役に立つのではないかと考えている。今日は冬眠を使った病気の治療について説明しよう。
人間を含めて動物はたくさんの細胞からできていて、一つ一つの細胞に必要な酸素や栄養分が届けられているから元気でいられる。逆になにかの理由で細胞に酸素や栄養分が送り届けられるなくなると病気になってしまう。だから、病院では、細胞に届かなくなった酸素や栄養をなんとかして届けようとして治療を行っている。治療が遅れると、細胞が生きていくための酸素や栄養分が足りなくなってしまい、細胞が死んでしまって、最終的には人間もダメージを受けてしまう。
酸素や栄養分が届かなくなった細胞を助ける方法がもう一つある。それは、細胞に省エネになってもらうことだ。普段使っているエネルギーを節約してくれれば少ない酸素や栄養分でもやっていけるはず。だから、病気になったときに細胞にエネルギーの節約をしてもらえば、病期の進行は遅れるはずなんだ。ところが、細胞の省エネは人間にはできないと考えられている。では、どんな動物ならできるのだろうか?そう、冬眠動物たちだ。
冬眠動物は冬になると食べ物がなくなってしまう。人間の病気とは原因が違うけれども、細胞に十分な栄養が届けられなくなるんだ。ところが、冬眠している動物たちは細胞がエネルギーを節約して、必要な栄養分を劇的にへらしてしまう。その結果、もともと作っていた「熱」もつくらなくなるから、体も冷えてしまうわけだ。冬眠している動物たちが動かないのも省エネの一環だね。冬眠動物たちは熱や運動のように目に見えるエネルギーの節約だけでは説明がつかないくらいエネルギーを節約できるんだ。細胞のエネルギー節約が冬眠の最大の謎だと言える。
私は実は小児科医でもある。人間を冬眠させることができれば、今では病院にたどり着くまでになくなってしまう患者さんを助けることができると思っている。だから、冬眠の原理を明らかにすることで1日でもはやく人間に安全な冬眠を実現したいと思う。そして、今は助からないような患者さんを一人でも多く助けたい。みんなも冬眠に興味があれば、いつでも連絡してきてほしい。人類の未来を一緒に作ってみないか?