休眠(きゅうみん)と睡眠(すいみん)
クマ志郎先生の休眠教室 #03
みなさん、こんにちは。私は動物の「休眠」の研究をしているよ。休眠とは、動物がほとんどエネルギーを使わない状態になることだ。今回は、休眠と言葉は似ているけど全く違う「睡眠」について説明しよう。
どんな動物も1日に1回は眠ると言われており、いまのところ全く眠らない動物は見つかっていない。面白いことに睡眠時間は動物によってとても変わる。一般的に強い動物ほど、睡眠時間がまとまっていて長いと言われている。これは寝ている間は無防備になるので、弱い動物にとっては食べられてしまう可能性のある睡眠はとても危険な時間でもあるからだ。
睡眠中は意識がなくなる。つまり、睡眠中には考えたり、思ったように動いたりすることができない。だけど、睡眠中は意識がないだけで、生きていくのにどうしても必要なことは体が自動的に行なってくれる。つまり、意識以外の体の機能は起きているときと大きくは変わらない。体温は37℃前後だし、心臓も止まらないし、呼吸も止まらない。
もうひとつ睡眠の大きな特徴は、起こそうと思えばいつでも起こせるということだ。ぐっすり眠っている人でも「家が火事だよ!起きて!」と言われて体をゆすられたら、起きてあわてて逃げ出せるよね?つまり、意識がないとはいっても、いざという時には意識を取り戻して、すぐに動き出すことができるんだ。
それでは休眠はどうだろう?休眠中の動物も、やはり意識がないので、動物は自分の考えで動くことはできない。この点は睡眠と似ているが、全く違うところもある。たとえば、休眠中は体温がいつもよりもかなり低くなる。また、心臓の動きや呼吸もいつもよりもゆっくりになる。そしてなんといっても、休眠中の動物を起こそうとしても簡単には起きない。だから、休眠中の動物は命がけで休眠しているといえる。また、休眠をしなくてもすむのならしない動物もいる。つまり、食べ物がなくなるから休眠しているのであって、食べ物があれば休眠しないのだ。
同じ「眠」の字を含む睡眠と休眠。似ているところもあるけど、だいぶ違うところもあるね。睡眠と休眠は全く異なる状態だから、冬眠のように長い休眠を行うと睡眠不足になり、睡眠を取るために休眠から覚めるんだ、という説を唱えている研究者もいるよ。はっきりしているのは、睡眠はどんな動物にも必要で、休眠は一部の動物しかしないことだ。でも、もしかしたら休眠は深い睡眠である可能性も残っている。今後の研究に注目だ。
(追伸)こちらに動画版もあるよ。