冬眠(とうみん)
クマ志郎先生の休眠教室 #02
みなさん、こんにちは。私は動物の「休眠(きゅうみん)」の研究をしているよ。動物がほとんどエネルギーをつかわない状態を休眠っていうんだ。そして「冬眠」は休眠が何ヶ月も続いた状態なんだ。今回は冬眠についてくわしく説明しよう。
哺乳類(ほにゅうるい)は赤ちゃんをおっぱいで育てる動物の仲間だ。犬、猫(ねこ)、人間はみんな哺乳類なんだね。犬や猫を抱っこすると温かいよね?これは、哺乳類は自分の体の温度を約37℃くらいに保つからなんだ。温かいということは、体の中で熱を作っているということだけど、動物は熱を作るエネルギーを食べ物からとっている。だから、熱をたくさん作るためにはたくさん食べなくちゃいけないんだね。
私たち人間は一年中いつでもご飯を食べることができるけど、自然の中で暮らしている動物たちはどうだろうか。実は冬になると食べるものが少なくなってお腹が空いてしまう動物もいるんだ。そして、都合の悪いことに、冬は寒い。だから体を温めるためにたくさんエネルギーが必要なんだ。なのに、食べ物がない。こまっちゃうね?
そこで、一部の哺乳類は体を温めることをあきらめて食べ物がなくても冬を過ごせるようになったんだ。これが冬眠。だから、多くの冬眠動物は何ヶ月も食べ物を食べないかわりに、熱を作らなくなるので、体が冷えてしまうんだね。体は冷えたから冬眠しているわけではないんだよ。カエルやヘビも冬眠するけど、彼らはもともと自分で自分を温められないので、冬になって周りの温度が下がると自然に動きが遅くなってしまう。自分を温めることをやめてしまう哺乳類の冬眠とはだいぶ仕組みがちがうんだよ。
冬眠はいいことばかりではない。何ヶ月も食べなくても平気だけど、そのぶん動けないし、冬眠中に何が起きたかわからない状態になるんだ。みんなも夜お布団にはいってから朝起きるまで自分の周りで何が起きたか覚えてないでしょう?冬眠中はそれが何ヶ月も続くんだ。それに冬眠中は体がとても冷える。私たち人間は体温が30℃よりもさがると死んでしまう可能性がでてくる。ところが、冬眠動物は少しくらい冷えても平気なんだ。ホッキョクジリスは冬眠中に−4℃まで体温が落ちたという報告もある。
冬眠は自然が生み出したびっくり能力なんだけど「しくみ」はまだ全くわかっていない。わかっているのは、死んだように冷たくなった体で数ヶ月過ごし、春が来ると冬眠から目がさめてなにごともなかったかのように活動を始めるということ。だから、私は冬眠動物の中には、生きるためには何が必要で、何があれば生命といえるのか、という究極の問いの答えがあるような気がしている。冬眠動物の体は冷え切ってはいても、小さな生命の炎(ほのお)が灯っているにちがいない。
(追伸)こちらに動画版もあるよ。