休眠(きゅうみん)ってなに?
クマ志郎先生の休眠教室 #01
みなさん、こんにちは。私は動物の「休眠」の研究をしているよ。休眠という言葉は、あまり聞いたことがないかもしれないね。休眠とは、動物がほとんどエネルギーを使わない節約状態になることだ。
動物は、生きるためにたくさんのエネルギーを使う。歩いたり、走ったり、飛んだり、泳いだりするのには、エネルギーが必要だ。また、動かずにじっとしていても、寝ていても、エネルギーを使っている。赤ちゃんがだんだん大きくなっていくときにもエネルギーを使う。何かを見たり聞いたり考えたりするだけでも、エネルギーを使うんだ。
もうひとつ、とても大事なエネルギーの使いみちがある。 それは熱を作って体を温めることだ。人間の場合だと、体を36℃から37℃くらいに温める必要がある。この温度を保つことで、心臓や脳など、体の中のいろんな臓器が調子よく働くことができるんだ。だから、寒い場所にいる時は、体の中ではエネルギーを使って熱を作り出し、体を温めている。逆に暑い場所では、汗(あせ)をかくことで体温を下げようとするんだ。
エネルギーを体を温めることに使っているのは人間だけではない。人間は、赤ちゃんを母乳で育てる哺乳類(ほにゅうるい)という動物のなかまだ。哺乳類はみんな、体温を37℃くらいに保つことで、元気にすごすことができる。人間の場合、体温が30℃を下回ったら死んでしまうこともあるんだ。だから体温の調節はとても大切で、そのためにいつもエネルギーを使い続けてる。
ところで、動物は食べ物を食べることで、エネルギーを体内に取り入れている。太陽の光からエネルギーを作ることができる植物との大きなちがいだね。では、食べ物がなくて、エネルギーを新たに取り入れられなくなったら、どうすればいいだろう? そのままでは、エネルギーを使って熱を作り出し、体を温めることができず、死んでしまうかもしれない。
がんばって食べ物を探す、というのも一つの答えだろう。ところが、リスやクマなど一部の哺乳類は、エネルギーをほとんど使わない休眠状態になって、ピンチをしのぐ。リスやクマが冬の間に「冬眠」することは知っているかな? じつは冬眠も、休眠の一種なんだ。冬の間に、何ヶ月も続ける休眠のことを、冬眠というよ。
休眠(冬眠)中はエネルギーをほとんど使わないのは、全身で頑張って節約しているからなんだ。たとえば、調子よく動き回るためには体を温める必要があるんだけど、動き回らなくてよければ温めなくてもいいわけだ。だから休眠している時、動物の体温はとても低く、10℃以下になる。でも、死んでしまったりはしない。それから、動物はふだん、息をすったりはいたりという呼吸をするけれど、休眠中の動物は呼吸もほとんどしない。心臓も、普段と比べると、たまにしか動かなくなる。それでも死なない。休眠ってすごく不思議なんだ。ちゃんと春になったら動物たちは動きだす。それでは休眠中は死んでるのか生きているのか?どっちなんだろう。答えはまだみつかっていないけど、休眠は死んでるのか生きてるのか、という問題はとても重要な問いだと思っている。いつか、そのことも話そう。
(追伸)こちらに動画版もあるよ。